━━━
━ ━
━━━
━━━
━━━
━ ━○
<爻辞>
「鼎趾を顚にす。否を出すに利ろし。妾を得て其の子を以てす。咎なし」
<読み方>
てい あしを さかさまにす。あしきを だすに よろし。しょうを えて そのこを もってす。とがなし。
<爻辞の意味>
「鼎(かなえ)を逆さまにする。塵やカスを出すのがよろしい。妾をもらって子供が生まれる。咎められることはない」
「火風鼎」とは「養い」について説かれた卦(か)です。
「養いの卦」と言えば「水風井」も同じでしたが、水風井は「水」をもって養い、こちらの火風鼎は「火」をもって(食べ物を作り)養う卦です。
そんな中この初爻では「鼎(かなえ)を逆さまにする」と言っています。
「鼎」とは、三本脚の付いた器のことで、鍋のように煮炊きできます。
この鼎を逆さまにするというのは、お作法的には褒められることではありません。
しかし逆さまにすれば、新しく煮炊きをする前に、中にある塵やカスを取り去ることができるのでよろしいというのです。
また同様に、妾をもらうこと自体は褒められたことはありませんが、その妾が子を産んでやっと跡取りを得られたならば、結果的に咎められることではないと言っています。
似たようなことを二つの例をもって表現しているわけですが、
共通しているのはどちらも「新しい良い状態を得るためには、まず古いものを捨て去る必要がある」といったことです。
「占った事柄」と「上記の説明」を、スライドガラスを2枚重ね合わせるようにして解釈してみて下さい。
また、下記の
「加藤大岳述 易学大講座」の要約も、ぜひ併せてお読みになり理解を深めましょう。
<説明の要点>
綜卦の革で言うと、この初爻は上爻にあって革の成就したところです。
鼎の卦は、その「故きを去った」ものへ、新しいものを入れて煮て行くというところから始まります。
新しいものを取り入れて、鼎の中で煮るためには、まず今まで残っていたカス、前に煮たものの余りをさらい出し、綺麗にしたうえで新しいものを入れるのでなければ、せっかく入れても味がまずくなったり、新しいものが台無しになってしまったりします。
では、どうするかと言えば、さかさまにするのです。
この卦を逆さまにすると、革の卦となり、革は革まるで中が綺麗になるのです。
それを象に即して言えば、初爻は卦全体から見ると鼎の脚に当たります。
しかし巽の主爻で本来は震(震を足とする)であるべきものが、ひっくり返っていると見られるでしょう。これが「鼎趾を顚にす」です。
その次の「妾を得て其の子を以てす。咎なし」とは、同じ内容を卑近な例をもって再度、説明したようなもので、例えば妻に子がいない場合に、その跡目を得るために妾を求めて、それに子を産ませ「子供がいない」という咎をなくしていく……これも故きを去って新しいものを取り入れる一つの例だと言うのです。
その是非や善悪については置いておいて、とにかくこの爻辞では、そういった世俗の実際をあるがままに記述していると受け取っておけば良いでしょう。
古いカスを逆さまにして出すというようなことは汚らわしいことで気持ちの良いことではないけれども、それによって鼎の中を綺麗にするのであれば、それは理に背くものではない。
そして汚れたカスを捨てるのは、自分の好まぬところを捨て、好むところを求めるためでなく、新たに煮るべき中味を尊重するからだと説いています。
(加藤大岳述 易学大講座 現代語要訳)