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<爻辞>
「損せずして之を益す。咎なし。貞吉。往く攸あるに利ろし。臣を得て家なし」
<読み方>
そんせずして これを えきす。とがなし。ていきつ。いくところ あるに よろし。しんを えて いえなし。
<爻辞の意味>
「自分は損をせず、これを益す。咎められる過失はない。正しい道を守っているので吉であり、進んで物事を行ってよろしい。臣を得て私を忘れる」
「山沢損」とは「物が減って少なくなること」について説かれた卦(か)です。
そんな中この上爻は「自分は損をすることなく、周囲に大きな益をもたらす」と言っています。
自分の財産を直接減らし、皆に分け与えるのでは限界があります。
そうではなく良い政治をしたり施設を作ったりするほうが永続的であり、はるかに尊い恵みと言えます。
このようであるなら天下の臣民は心服し、しかし自身の家や私事は顧みずに専念するので「臣を得て家なし」と言っています。
「占った事柄」と「上記の説明」を、スライドガラスを2枚重ね合わせるようにして解釈してみて下さい。
また、下記の
「加藤大岳述 易学大講座」の要約も、ぜひ併せてお読みになり理解を深めましょう。
<説明の要点>
これが三爻に対応する成卦主爻です。
泰の上爻(陰)であったものが三位の陽を損して、これに益したのです。
それが「損せずして之を益す」であり、下から益し来たもので、その陰位を埋めてしまったのですから「臣を得て家なし」とも言えるでしょう。
したがって同じ句でも二爻の「損せずして之を益す」とは大いに内容が異なっています。
上の乏しい時に、必要とする人員や物資が、たちまち下から徴用されるようであれば、大いに天下の民心を得ているのですから、乏しいというその咎も消えてしまいます。
また、進んで事をなしても、よくなし遂げるというのが爻象爻意であって「貞吉」とあるのは、この陽爻にのみ人心が集まって五爻の君を軽んずるような間違いのないように戒めたものです。
「臣を得て家なし」とあるのも、公を専らにして私家を持たないという意味に推すべきでしょう。
(加藤大岳述 易学大講座 現代語要訳)