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〈爻辞〉
「魚を貫く。宮人の寵を以てす。利ろしからざるなし」
〈読み方〉
うおを つらぬく。きゅうじんの ちょうをもってす。よろしからざるなし。
<爻辞の意味>
「連なって刺された魚のように、女官長が女官らを連れ君子の寵愛を受ける。大変よろしい」
「山地剥」の卦(か)は「剥ぎ落とすこと」について説かれた卦です。
そんな中この五爻は君主の位なので、この山地剥の時への対処法を告げています。
今にも剥ぎ落とされそうな君子の時代、どうすればその危機を回避できるのか……ということです。
それは弱い者が邪心をもって強い者を剥ぎ落とそうとするのではなく、たとえば女官長が下の女官らを連れ立って、皆で君の寵愛を受けるようひたすら柔順になるべきだと言っています。
そうすれば「君子が剥ぎ落とされる」という「山地剥」の危機を回避することができ、大変よろしいのです。
「占った事柄」と「上記の説明」を、スライドガラスを2枚重ね合わせるようにして解釈してみて下さい。
また、下記の
「加藤大岳述 易学大講座」の要約も、ぜひ併せてお読みになり理解を深めましょう。
<説明の要点>
五爻の爻辞は、五陰中、ただひとつ「剥」と言わずに「魚を貫く」とあります。
魚は陰の物です。
その魚が、たくさん(五陰)重なっているといいますか、イワシの串刺しのように、連なって刺された魚のことを「魚を貫く」としています。
「宮人の寵を以てす」というのは(この部分の解釈も諸説ありますが)消長をもって見れば、陰が極まって、まさに陽を剥ぎ尽くそうとするのがこの五爻です。
しかしそれは、個的な爻位からの見方です。
これを主卦の主爻として剥尽の卦を司る全体的な見方からすれば、この剥運に対していかに対処すべきかを告げているわけで、勢い勝りゆく陰を重い地位には就かせず、後妻妾を遇するがごとく寵愛するにとどめる……そうして陰の怒りを制し、陰の剥落を免れるというのが、剥に臨んで身を全うする方法である。
それを告げたのが、この爻辞だと解釈するのが正しいでしょう。
このようにすることによって、「利ろしからざるなし」の結果を得て、剥落の災いを免れるというのです。
これは小人の禍であり、かつ君子の幸と言うべきでしょう。
(加藤大岳述 易学大講座 現代語要訳)