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<爻辞>
「比を顯かにす。王、三驅を用いて前禽を失う。邑人誡めず、吉」
<読み方>
ひを あきらかにす。おう、さんくをもちいて ぜんきんをうしなう。ゆうじん いましめず、きち。
<爻辞の意味>
「水地比の道を明らかにする。王が狩りをするときは、三方を囲んで獲り、逃げる獲物は逃がしてやる」
そのような姿勢で国を治めるため、民を苦しめることもない」
水地比(すいちひ)とは、親しむこと・助け合うことについて説かれた卦(か)です。
この五爻は、国を治める王について、その水地比の道を明らかにしています。
王は狩りをするとき四方から囲んで皆、獲ってしまうのではなく、一方を開けておいて、そこから逃げる獲物は逃がしてやるのです。
そして、逃げずにこちらへ向かってくるものだけを獲る…。
このように、全てを自分のものにしようとするのではない姿勢を「正しい水地比の道」としています。
国を治めるのも同じことで、全ての者を力でもって強制的に従わせるのではなく、従わないものは放っておく。
正しく国を治めているならば、そうするうちに自然とすべて者が王に感化し、服従するようになるのだと言っています。
「占った事柄」と「上記の説明」を、スライドガラスを2枚重ね合わせるようにして解釈してみて下さい。
また、下記の
「加藤大岳述 易学大講座」の要約も、ぜひ併せてお読みになり理解を深めましょう。
<説明の要点>
この五爻は、水地比の成卦主爻で、比の徳をその身で表現し、かつそれを司る者です。
「比の道を明らかにする」とは、五爻は君位にある爻なので、自分に親しみ従い交わりを求めてくる者に対し、あいつはダメだとか、こいつは目をかけてやろうだとか、偏った交わりをせず公明正大に受け入れる…この爻はそうすべき位に当たっています。
これは君位に当たるので「王」の字が使われています。
「三驅」とは狩りをすることについて言ったもので、本来なら四方から囲んでしまえば完全に打ち取ることはできますが、あえて一面を開け三方から追います。
一方だけは逃げ道を与えてやり、そこから逃げる者については逃がしてやる…それが王者の慈悲としています。
このことを当てはめますと、つまり、全ての者が五爻に親しみ従うように仕向けるのではないということです。
中には拒む者、交わりを好まない者もいます。
それを強引に自分の方へ引き込もうとはせず、自然と交わり親しんでくるようにする。
ゆとりある、豊かな交わり方を言ったものです。
そんな五爻の君ですから、民衆ものびのびとし、泥棒もイジメもなくビクビク暮らすこともない。
それが「邑人誡めず、吉」ということです。
(加藤大岳述 易学大講座 現代語要訳)