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<爻辞>
「臀に膚なし。其の行くこと次且たり。羊に牽かれて悔い亡ぶ。言を聞いて信ぜず」
<読み方>
いさらいに はだえ なし。その いくこと じしょたり。
ひつじに ひかれて くい ほろぶ。ことを きいて しんぜず。
<爻辞の意味>
「尻に肉がない。ぐずぐずして進みかねている。羊の群れについて行くようにすれば悔いはなくなってしまう。
言葉を聞いても信じない」
「沢天夬」は「裂き破る」ことについて説かれた卦(か)です。
そんな中この初爻は、裂き破らなくてはならない悪があるというのに発奮することができない弱い者です。
皆が進んでいくのに自分だけが止まってもいられないことを「尻に肉がなくて座っていられない」ことに喩え、
かといって発奮して進んでいくこともできず、ぐずぐずしています。
それならば羊の群れにでもついて行くように皆に従って進んでいけば後悔するようなことにはならないが、
この者は人のそういった助言を聞いても信じないだろうと言っています。
「占った事柄」と「上記の説明」を、スライドガラスを2枚重ね合わせるようにして解釈してみて下さい。
また、下記の
「加藤大岳述 易学大講座」の要約も、ぜひ併せてお読みになり理解を深めましょう。
<説明の要点>
初爻や三爻は進む勢いが強くて、進むことを控えさせる方でしたが、この四爻は反対に自ら進もうとしても進むことが思うように行かない爻です。
「臀に膚なし。其の行くこと次且たり」というのは、文字通り尻に肉がないので進みかねるという意味です。「次且たり」とは行き悩む様子です。
臀に肉がなければ、じっと座っていることも出来ず、歩くことも困難なわけですが、この爻は外卦兌の一爻となっているので、上爻の勢いの強さも知っているし、四爻は庶政を司る大臣宰相の位置ですので、上爻とは比較的親しいわけです。
陰位に居る陽爻ですから、気力に欠ける所もあるので、一念をまっしぐらに貫くこともできない……非常に苦しい立場にいる爻です。
では、どうすれば進退両難の時に善処できるのかと言えば「羊に牽かれて悔い亡ぶ。言を聞いて信ぜず」です。羊という動物は、引く人が前に立っているとなかなか進まないものです。しかし後ろから追って行けば進みます。
そのように内卦の三陽の前に立って指導しては上手く行きませんが、三陽爻を前に立ててやれば良いのです。羊に引かれ、その後から進んで行けば悔いが亡ぶのですが、そう教えられても聡明でないので信じることが出来ず、結局は悔いをなくすことが容易でないということになってしまいます。
この爻は、実に面白いところを見ています。
邪侫な権力者を決去するのに、四爻などの位置にいる者が先立って事を挙げれば、すぐ露顕してしまうでしょうし、四爻自身の受ける傷害もまた大きいです。
しかし目下の有力強壮な三陽を表面に立てて進め、自分はその背後
から指導して行けば悔い亡ぶと教えているのです。
(加藤大岳述 易学大講座 現代語要訳)