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<爻辞>
「杞を以て瓜を包む。章を含む。天より隕つる有り」
<読み方>
きをもって うりを つつむ。しょうを ふくむ。てんより おつるあり。
<爻辞の意味>
「杞柳で瓜を包む。麗しい道徳を具えている。天から落ちる時がくる」
「天風姤」とは「(良からぬ者などに)思いがけず遇う」ことについて説かれた卦(か)です。
そんな中この五爻では、杞柳(高い木)が瓜を包んでいる」と言っています。
麗しい道徳を具えている五爻を杞柳に喩え、良からぬものを甘美な瓜に喩えています。
良からぬ瓜がそのツルを杞柳の木に巻き付かせながら、上へ上へと這い上がっていきます。
強く賢い杞柳は、それを過激に排除することをしません。
賢い杞柳は、上へ登った瓜がやがて爛熟し、自然に落ちてしまうのを待つのです。
※ こちらは漢文学者の公田連太郎先生の解説に基づいておりますが、下の加藤大岳先生はまた違った解釈をなさっています。
色々な説を読むのも勉強になりますので、ぜひご覧ください。
「占った事柄」と「上記の説明」を、スライドガラスを2枚重ね合わせるようにして解釈してみて下さい。
また、下記の
「加藤大岳述 易学大講座」の要約も、ぜひ併せてお読みになり理解を深めましょう。
<説明の要点>
瓜というのは初爻の事です。
杞とは、高木の一種で、葉の茂ったものだそうですが、二~上爻の陽爻を指しています。
その杞に蔓を伸ばし(巽をまつわるとする)巻きついている瓜です。
その瓜のことを初爻としています。そして瓜を包んでいるのは陽爻である葉です。殊に二爻が、それだと言えるでしょう。
根元に人を喜ばせるような瓜がなっているのだが、二爻の葉に隠されていて見えない。
けれども風が来て揺れると葉蔭からチラチラするので、かえって貪欲になるのですが、これに正しく処して誤らない方法が「章を含む」です。
章というのはアヤであり、才能ですが、それは隠して隠しきれずに仄見えてこそ奥ゆかしいのであって、これを丸出しにしてしまっては、感心させられることがあっても、敬うことはありません。
陰の初爻も五陽の下に匿されているからこそ、あでやかにも見えるのであり、これを剥き出しにしてしまうと「女壮なり」の本性を現してしまうことになるのです。
そして自分の才能を隠すということは、徳が高い人でないと出来ないのと同様に、陰の小人の本性を剥き出しにはせず、アヤある存在として置くには、やはり杞の高木の茂っているような高い徳化がなくてはならないというのが「章を含む」です。
次に「天より隕つる有り」とあるのは「志命を捨てざるなり」で、夬の卦で決し去られた陰爻が思いがけなくやって来たので、それはちょうど天から隕ちてきたようなものですが、無用有害だから要らないなどといって放任して置かず、それが時の勢いであるならば、そのまま受け入れ、天命に順応した方法で処置して行く……その方法が先ほどの「章を含む」ことに当たります。
しかし、下の一陰の萌すところ、すなわち君子の道の傾こうとする第一歩ですが、そのような機運……誰も望まない天から落ちて来たような運命にあっても、それに処する方法さえ誤らなければ、かえってそれを幸いに転じ、効果を発揮させることもできるのです。
しかしそれは、この五爻のような剛健中正の者にして始めて為し得ることです。
それゆえ、主卦の主爻であるこの五爻に、姤に処する道全般を記述したとも言えるでしょう。
(加藤大岳述 易学大講座 現代語要訳)