だいたく ほんか
━ ━主爻
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〈卦辞〉
「兌は、亨る。貞に利ろし」
〈読み方〉
だは、とおる。ていに よろし。
〈説明の要点〉
今度は、巽の綜卦である兌です。
この兌は、一陰が二陽の上にあるのを、陰の力弱い者が陽の力強い者に持ち上げられていると見ます。
そして、柔弱なものが強剛なものに持ち上げられて悦ばないものはないので、これに「悦び」の意を推しました。
また悦びがあれば、それはすぐ表面に表れるものなので「見れる(あらわれる)」意も考えるわけです。
もっとも、この「見れる(あらわれる)」というのは「兌は見れ、巽は伏す」で、一陰が巽においては二陽の下に伏し、兌においては二陽の表面に見れて(あらわれて)います。
それから上部が陰で欠けているのを、沢に象り、これを兌の正象としました。
人体では、巽は下体の欠所ですから陰門とし、兌は上部の欠所なので口としました。
兌という文字そのものも、口頬の象形だと説かれています。
そして、口の周りは喜んだ時、それを敏感に表すところでもあり、そこにも「悦び」の卦意を見ることができるでしょう。
また兌を小女とし、あるいは三陽の健やかなるべき上画を欠いているところから、これを毀折と見ます。
口をもって悦ばせることは、ともすると巧言令色に陥りやすいので、兌においては特に信(まこと)を求めますし、また、悦びというのは人を耽溺させるものなので、慎ましくあるべきことが、この卦には要求されています。
兌をもって悦びとしますが、悦びをもって事にあたり、悦びをもって人に臨むということは、それは亨通を得る道であります。
しかし、その悦びはともすると自分の欲望を満たすものの上にかかることが多いのですが、それは悦びに溺れることになるので、正しい悦びを楽しむような悦びでなければならないというのが、卦辞の大意
です。
その「貞に利ろし」の貞というのは、「正しい」という意味とともに「順しやか(つつましやか)」という意味も合わせて考えなくてはなりません。
(加藤大岳述 易学大講座 現代語要訳)