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〈爻辞〉
「腊肉を噬みて毒に遇う。小しく吝なれども咎なし」
〈読み方〉
せきにくを かみて どくに あう。すこしく りんなれども とがなし。
<爻辞の意味>
「干して固くなった肉を噛んで毒に当たった。少し恥ずべきことだが咎められる過失はない」
「火雷噬嗑」とは「障害を打ち砕いて和合一致させる道」について説かれた卦(か)ですが、それぞれの爻の意味としては「罪人」と「罪人に刑罰を与える役人」として書かれています。
罪人を裁いて(障害打ち砕いて)、平和的にする(和合一致させる道)のが火雷噬嗑の卦ですから、なんら違和感はありませんね。
そんな中この三爻も(二爻同様)「罪人に罰を与える側」の役人です。
この役人の相手である罪人は、だいぶ悪い罪人で、取り調べるのも手ごわい相手です。
にもかかわらず、取り調べる側のこの三爻の役人は、弱くて能力も高くありません。
ですので、罪人に反抗的な態度を取られたりして恥をかかされます。
それらのことを「固い肉を噛んで、毒にあう。少し恥をかかされる」と表現しています。
しかし三爻としては、役人として正しく罪人を取り調べているわけですから、咎められることはないのです。
「占った事柄」と「上記の説明」を、スライドガラスを2枚重ね合わせるようにして解釈してみて下さい。
また、下記の
「加藤大岳述 易学大講座」の要約も、ぜひ併せてお読みになり理解を深めましょう。
<説明の要点>
「腊肉」というのは小鳥などの丸干しです。
骨も付いていれば筋もあるという硬い肉のことで、二爻が陰をもって軟らかい膚であったのに対し、これは同じ陰でも陽位にあって、中に骨ばったところがあるのです。
そしてこれは「ほしじ(乾肉)」ですから、古い肉です。
三爻は二爻より、噬嗑の意味が強まるので、罪が重くなってきます。
腊肉は骨を蔵しているので、噛みにくい。
これを犯罪者に見立てても前科何犯というような古強者にあたるので二爻の場合のように素直に罪を認め刑に服することをしない。
言葉に毒をもっていたり、ののしったりするので裁く側としても骨が折れる。
それを「腊肉を噬む」と言い、「毒に遇う」と言ったのです。
毒とは三~五爻の坎をもって毒としています。
また三爻は、陽位に陰でいるので裁く者としては当を得ていない。
才は強いが力が弱い。
ですから罪人に操られたり、愚弄されたりする危険があるわけです。
この爻は、三~五爻で坎を構成している一つなので、坎を毒とする所から刑を行って恥辱などを受ける意があり「小しく吝」なのです。
しかし元来、罪ある者を裁くのですから、咎を受けるべき理由はないのです。
(加藤大岳述 易学大講座 現代語要訳)