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<爻辞>
「事を已めてすみやかに往く。咎なし。酌りて之を損す」
<読み方>
ことをやめて すみやかに いく。とがなし。はかりて これを そんす。
<爻辞の意味>
「事をやめて速やかに行く。咎められる過失はない。酌量して自分自身が損をする」
「山沢損」とは「物が減って少なくなること」について説かれた卦(か)です。
そんな中この初爻は、充分に事情をくみ取ったうえで自分自身の仕事をやめ、速やかに相手のところへ向かいます。
その相手を助けたり、自分の物を与えたり等々…、自分が損して相手に益してやるためです。
ですので、咎められるような過失はありません。
「物が減って少なくなること」とは単純に目に見えるような「物」だけでなく、このように形のないものも含まれます。
「占った事柄」と「上記の説明」を、スライドガラスを2枚重ね合わせるようにして解釈してみて下さい。
また、下記の
「加藤大岳述 易学大講座」の要約も、ぜひ併せてお読みになり理解を深めましょう。
<説明の要点>
これは損の初めにあって、損の意味の最も強いところです。
下にある豊かなものを割いて、他を益してやらねばならない事にあたって、益してもらうほうは少しでも早い方が効果的であり、益してもらえばもらうほど、その必要が満たされます。
ですから損の場合には初位のほうが卦の意が強く、上に進むに従って卦意が薄らいで行きます。
たとえば、堤防が崩れ、その欠けた部分を有り合わせの土嚢などで防ぐというのも一つの損ですが、それは早い方が良く、遅れれば間に合わなくなってしまいます。
国に戦争が起こって、常備兵だけでは間に合わず召集を行うのも、一つの損ですが、そういう場合にも、初めに充分な兵力を募って敵に当たれば、一挙に解決してしまうことも、まごまごしていたり、出し渋っていたりすると返って解決が難しくなります。
そのような意味合いからいって、損の初爻は「事を已めて?かに往く」のです。
「事」というのは現に携わっている仕事であり「往く」とあるのは、損を行うことであって、爻象に即して言えば応爻である四爻の陰を益してやることに当たります。
そうすれば己を損してなお、咎なきを得るのです。
そこには、この爻が陽をで陽位にいる正しい者であるから、動く必要はないというような考えを持たず、上の乏しがひっ迫していることや自らの仕事を投げ出しても、その損する事を行うことの意義を酌量し損すべきものを損するのだという意味です。
陰柔不才で力のない四爻が、それでも何とか上を益そうとしてる
その志に、この初爻は応ずるのです。
(加藤大岳述 易学大講座 現代語要訳)