すいかきせい ほんか
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━ ━主爻
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〈卦辞〉
「既済は、亨るもの小なり。貞に利ろし。初めは吉にして終わりは乱る」
〈読み方〉
きせいは、とおるもの しょうなり。ていに よろし。はじめは きちにして おわりは みだる
〈説明の要点〉
既済というのは「既に済る(なる)」という意味であり、また「已く済う(ことごとく ととのう)」という意味もあります。
水と火が一緒になって、しかも下降する坎が上に、上昇の離が下にあれば、両気が相交わって事をととのえるのは言うまでもありません。
そして全六爻が、ことごとく陰陽の位に正しくて、その点からも「已く済う」象を見ることができるでしょう。
したがって、この卦が易経の終わろうとするところに配され、しかも既済では終わらせずに、更に未済の卦を配し、物がととのって終わるということがなく、消長循回するのを示したのは、まことに妙趣の尽きないものを覚えます。
既済、未済は、これを乾坤に推して言えば、その象意は泰否に当てて見ることが出来るでしょう。
すなわち既済は、泰の心をもって解釈し、未済は否の象をもって解釈することができるのです。
既済は、既にととのったことを意味する卦なので、亨るべきものは既に亨通成就しています。
ですから、更に亨るべきものと言えば、それは既にととのったものを整頓する意味合いの小さな事でしかないのは当然です。
そこで卦辞では「亨るもの小なり」と言っています。
そして、このように済ったものは、この卦の各爻が位正しく暗居しているように、固く保持することを念とすべきで「貞に利ろし」いのです。
泰の卦においてもそうでしたが、済ったその初めは吉であっても、時を経るにしたがって乱れを生じてくるのが自然の勢いです。
それを卦辞で「初めは吉にして終わりは乱る」としています。
ですから、予め終わりの乱れを察し、努めて防止しなければならないと教えています。
また「初めは吉にして終わりは乱る」というのを、既済中の既済である内卦の中は柔をもって占め、順をもって妄りに力を用いないので吉を得ますが、既済中の未済に移る外卦は坎で、止まるときは窮するのだと説いております。
(加藤大岳述 易学大講座 現代語要訳)