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<爻辞>
「其の膏を屯す。小貞なれば吉。大貞なれば凶」
<読み方>
その こうを ちゅんす。しょうていなれば きち。だいていなれば きょう。
<爻辞の意味>
「潤いが全体に行き渡らない。このような時には、日常的な仕事を正しく行うこと。なんとか打開しなくては、と言って大きなことをするのは凶」
この五爻は、水雷屯という悩みの時代にいる王様です(五爻は王様や社長です)。
ですので、国全体を豊かに潤したくても、行き渡らないのです。
これは王様に力がないのではなく、水雷屯という難しい時代にあるがためです。
このような時は、日常的な仕事をきちんとこなすのが良く、打開を焦って大きなことに打って出るのは危険です。
※ 別の説では、「小貞なれば吉。大貞なれば凶」の部分を、全く逆に説いているものもあります。
「小さい悩みなら日常を保っていても吉。しかし、このように大きな悩みとなると日常を保ってばかりでは解決できずに凶」……このような別の説もあります。
「占った事柄」と「上記の説明」を、スライドガラスを2枚重ね合わせるようにして解釈してみて下さい。
また、下記の
「加藤大岳述 易学大講座」の要約も、ぜひ併せてお読みになり理解を深めましょう。
<説明の要点>
「膏」は油のことです。
たとえば「膏沢」などと言えば、体内の脂がくまなく行き渡り、保温したり傷を塞いだりする役目をします。
それが「屯す」のですから、そういった力が弱く、量も少なく、行き巡ろうとしても一か所に屯してしまって、行き渡らない。
その悩みを言ったものです。
これを国政にたとえれば、上が豊かでないため下々の窮乏を救うことができない。膏沢を施せない、となります。
これは屯難の時にあって、君の位(五爻)に居るからです。
施すことのできない悩みです。
「小貞なれば吉」「大貞なれば凶」とありますが、この小貞は貞正という意味で、大貞は、その正しいという意識が強すぎて「固執」に至ることを指しています。
貞は「正し」でもありますが、「固し(頑固・強情など)」でもあります。
すなわち、膏沢を施せないような時においては、日常の小事はそのまま正しく行ってゆく程度が良い。
しかし屯の時に、これを打開するのは君の責務だと固執し、膏沢も行き渡らないのに大事に当たる……そういう事をしてはいけないということです。
(加藤大岳述 易学大講座 現代語要訳)