すいらいちゅん ほんか
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━━━主爻
<卦辞>
「屯は、元いに亨る、貞しきに利ろし、往く攸あるに用うる勿れ。侯を建つるに利ろし」
<読み方>
ちゅんは、おおいに とおる、ただしきに よろし、ゆくところ あるにもちうる なかれ。
こうを たつるに よろし。
<説明の要点>
水雷屯には「難む(なやむ)」という意味があります。
内卦の「震(雷)」を地中の草と見て、外卦の「坎(水)」を凍り固まった地上と見ます。
ですから、地中の草が地上に伸びようとしても伸びることができない……その難みの中に動くというのが「屯」です。
易の六十四卦の中には「四難卦(しなんか)」という、四つの難みの卦があり、水雷屯はそのうちの一つです。
そして「屯」は事を始めるための生みの苦しみの難みだと見ることもできます。
彖伝に「天地始めて交わりて、難み生ず」とあるように、初めての世界を造っていく難みです。
例えば学校を出て、初めて社会で働こうとするが適当な就職口が見つからず苛立ち苦しむとか、新事業に着手したが何と言っても創業なので、順調に事が運ばない……こういった創造に当たっての苦しみが屯難です。
「元いに亨る」については、乾や坤で説明した通り、亨通成就するということです。
しかしそれは、屯が屯のままで直ちに亨通するというのではありません。
難みにも開き通じる道があり、ものを成就させていく過程のひとつの難みであるということを言ったものです。
いわば条件付きの「元亨」なのです。
そして、その条件というのが「貞しきに利ろし」であり、「往く攸あるに用うる勿れ」であり、「侯を建つるに利ろし」となります。
難みの時にあって心をグラつかせたり邪道に走ったりせず、正しい道につき、内に勉めなくてはならないというのが「貞しきに利ろし」であり、「屯」に処する大方針です。
「往く攸あるに用うる勿れ」とは、みだりに、苦し紛れに進んではいけないとの戒め。
では、どうすれば屯難を打開できるのか…これを示したのが「侯を建つるに利ろし」です。
「侯」というのは諸侯とか大名とかいったイメージです。
こういう創業の難みのときですから、王の命令もあまねく行き渡らないので、諸侯を建てて治めさせ、元いに亨るところまで導いていかなくてはならないというわけです。
(加藤大岳述 易学大講座 現代語要訳)